ムーンライダーズ@C.C.Lemonホール(渋谷公会堂)
「OVER the MOON / 晩秋のジャパンツアー2006」
2006/11/24(金) C.C.Lemonホール(渋谷公会堂)
「“30周年”は4月の野音で終わって、今回のアルバムは気持ちとしてはもう“31年目”という感じ」というようなことを慶一さんがどこかのインタビューで語っていたけれど、この日のライブもそんな言葉のままのアグレッシヴなステージだった!30周年の回顧の趣より、むしろ単なる「レコ発ツアー」に近い印象。バンドの「現在」を荒っぽく勢いよく疾走させていく潔いステージング、演出面なんかも含めてその危なっかしい前傾姿勢がつくづく彼ららしいと思った。あーもう、これだから好きだぜムーンライダーズ!
この日は3日前のキリンジに引き続きとりりんといっしょだったのだけど、彼女にまとめて取ってもらったチケがまたしてもよい席で、ステージがかなり近い距離…。おそるべし、とりりんのチケ運(本人は「絶対もう使い切ったと思う」と・笑)。ステージ前面に薄い幕がかかっていて、透けて見える向こう側、ステージ右端のテーブルに座る6人の姿からライブはスタート。ああ、この演劇的な意匠の凝り方、ライダーズらしいな…。
「When This Grateful War is Ended」~「A Song For All Good Lovers」で軽く挨拶をキメたあと、いきなりキターーーー「WEATHERMAN」!!イントロ、かっちょえー!早口ボーカル、かっちょえー!岡田さんの歌、かっちょえーーー!そして間奏では、あのかしぶちドラムのソロ部分をサポート矢部さんが!アルバムのかしぶちさんの叩きっぷりとはまたちがった強靭なドラミング、うーカッコイイ。…と思ってたら、そのエンディングを切り裂くように良明さんのギター、うわ、「ど~よ!」キターーーー!!(正式タイトルは「果実味を残せ!Vieilles Vignesってど~よ!」です。)これまたイキナリでびっくりしたなー。この2曲ぐらいで、もうすっかりテンション上がる。この疾走感、この切迫感、この重量感が今のムーンライダーズっていう50代バンドのありのままだなんて。なんという「現在」をこのバンドは生きてるんだろう!
そのあとも『MOON OVER the ROSEBUD』からの曲が続いて、こっちは息が止まりそうなぐらい。「11月の晴れた午後には」なんか演奏されると、ナマでこの深みを出せるのはこのバンドだけだろうななんてあらためて思うし、「Serenade and Sarabande」では映像と絡み合いながらの“m,o,o,n,r,i,d,e,r,s”のつぶやきで泣きそうになるし。「琥珀色の骨」は、武川さんのマンドリン、慶一さんのアコースティックギター、良明さんのエレクトリックギター、そのうつくしい音の重なりはもちろん、3人それぞれの指の動きを視界の中で重ね合わせてうっとり…。そして曲の最後、この日初めて博文さんのボーカルが「終わる夢もない…勝つ朝もない…」と入ったときには、もう背筋がゾクッとしてどうなるかと思った…。「Vintage Wine Spirits, and Roses」がまたヤバかった…。かしぶちさんの静かなブラシの音と、場末のバーで鳴るような武川さんのトランペットと、良明さんの甘いギター。慶一さんの声が「76年来 仕草は変わらない…」と歌うのを、そして「不幸はずっと続いてもいいんだ…」と歌うのを、ナマで聴く体験。もう、なんだか。ただ、涙。
そこから「When This Grateful War is Ended」(の2nd verse以降)が演奏され、オープニングからずっと張ってあった薄い幕がストンと落ちバンドの姿が現れて、そこで初めて慶一さんのMC、だったんだよね。文章だとあっというまだけど、スタートからここまででたぶん9曲!この間をMCナシで疾走する潔さに惚れ惚れしたな。…と、前半にたっぷり感動しつつ、後半に突入したらまたとんでもなかったワケだけど。
アルバムでも好きで好きでしょうがない「腐った林檎を食う水夫の歌」、すっごくよかったーーー。激しくロックな曲や甘くロマンティックな歌を上手に演奏するバンドは他にもいるかもしれないけど、この曲のとぼけたチャーミングさを(ましてナマで)出せるのはムーンライダーズしかいないと思う。そして70年代シリーズ、かしぶちさんの「砂丘」は無論キュンとこないわけないんだけど、博文さんの「シナ海」にはビックリしたー。この日いちばん驚いた選曲。こうして聴くと、ものすごくいい曲であるとともに、なんと難解な曲だろう(笑)、と。このバンドの辿ってきた遠回りの道がまたいとおしくなる(笑)。
「ニットキャップマン」がねーーー。まったく想像もしてなかった岡田さんボーカルだよ!これ、はっきり、ヤラレました。最初の「WEATHERMAN」でかなりグラッときてたんだけど、この不意打ちで岡田さんにココロ持ってかれちゃったかも…。私、基本的にキーボード系の人に惚れにくくて、6人の中でも岡田さんにトキめいたことって今まで殆んどなかったんだけど(失礼な…笑)、この日はねー、席が左寄りだったせいもあって、岡田さんカッコイイーーー(はぁと)!って。もー仕草のひとつひとつにドキドキ。ほんとカッコよかった…。そのあとの曲、まさかと思ったんだけど期待通り「ニットキャップマン外伝」!!ぎゃーーーじつは本編よりこっちのほうが好きなのだ!良明さん、博文さん、“ムーンライダーズ内ガキんちょ”(50代だけど・笑)ふたりのボーカル、やさぐれてて素敵ーーー。そして「馬の背に乗れ」で客席が立ち、私も!「トンピクレンッ子」「工場と微笑」、もうこの辺は楽しくて楽しくて何が何だか!
最後に「ダイナマイトとクールガイ」で来た道をセンティメンタルに振り返らせ、「Cool Dynamo, Right on」で「思い出す事 集めて 吹き飛ばそう」と歌う。この2曲が橋渡された瞬間、過去が潔くスクラップされて大事な何かだけが手のひらに残ったような気がしたのは、慶一さんの魔法なのか、私の妄想なのかわからないけど。
アンコールは「BEATITUDE」「DON'T TRUST ANYONE OVER 30」(30,40,50,60バージョン)「Who's gonna die first?」。ムーンライダーズの「覚悟」を並べたナンバー、と私は勝手に思った。「Who's gonna die first?」の最後の最後、かしぶちさんと矢部さんのドラムソロの応酬がカッコよすぎて失神しそうになる…。もう、コレを観られただけでも今日は満足…。
結局MCはほとんどないまま、2時間あまりみっちりと24曲(たぶん)も!50代の6人(+40代のサポートドラマー)がこの密度と速度とクオリティと精神の若さを持った「ライブバンド」であることの凄さ。後半の名曲群にもふっ飛ばされたけど、やっぱり個人的には『MOON OVER the ROSEBUD』からの数々の演奏がとにかく印象深かった。新譜の曲だけでも、ムーンライダーズはひとつも欠けるところなくムーンライダーズなんだな、って。それは彼らが、過去に寄りかかるバンドじゃなくて、過去を含んだ「今」の存在だからだ、と思う。
あーなんだかとりとめないし全然書き足りないけど、それはまた。ムーンライダーズ、今後の活動も普通に当たり前に相変わらずとんでもなく期待してます。ライブで観たムーンライダーズが、普通に当たり前に相変わらずとんでもないバンドだったから。
*セットリスト
01 When This Grateful War is Ended
02 A Song For All Good Lovers
03 WEATHERMAN
04 果実味を残せ!Vieilles Vignesってど~よ!
05 11月の晴れた午後には
06 Serenade and Sarabande
07 琥珀色の骨
08 Vintage Wine Spirits, and Roses
09 When This Grateful War is Ended
10 ゆうがたフレンド
11 腐った林檎を食う水夫の歌
12 Dance Away
13 砂丘
14 シナ海
15 ニットキャップマン
16 ニットキャップマン外伝
17 馬の背に乗れ
18 トンピクレンッ子
19 工場と微笑
20 ダイナマイトとクールガイ
21 Cool Dynamo, Right on
(アンコール)
22 BEATITUDE
23 DON'T TRUST ANYONE OVER 30
24 Who's gonna die first?
この記事へのコメント
そうなの、感覚としてはあっというま、でも気付けば中味はものすごい密度で。あんな深みと広がりのあるライブをあの速度で転がせるバンド、何も50代に限定せずとも、音楽シーンにそうはいないよね。ああ、とんでもないバンドのファンになっちゃったもんだな…その偶然とちょっぴりの必然に心から感謝、です。…っていうか、私も巻きこまれたまま何が何だか(笑)だったので、ホント、もういちど観たい!
素晴らしいレポをありがとう★
感動が甦ります。
前半作りこんだ分、後半リラックスした感じで良かった。それにしてもあのスタミナにもビックリだー!
私も TB させてもらいますね~。
おお、まりちゃん★も岡田さんサイドだったのねー。ね~岡田さんほーんとカッコよかった~。って、私が今まで気付いてなかっただけか(笑)。今年はライダーズファン楽しませてもらったね、濃い1年だった…。
>あやさん
TB&コメントども~。ね、前半はホントお芝居のような流れでね。あんなカッコイイことできるのもムーンライダーズなんだよなー。そこらのしけたバンドじゃ、やるのも観るのも恥ずかしくなっちゃうだろうけど(笑)。そこはやっぱり「ロックスター」と呼べるバンドだなーとつくづく思う。それにしても普通の50代思い浮かべたらありえないスタミナだよね、疲れた中年ならギター持って5分立ってるだけでも厳しいよ(笑)。
私は2階席の岡田サイドでした。あと、これだけは言っておきたかったのだけど(笑)帰りに青山さんと夏秋さんが話しているところに遭遇!なんだかドキドキしました。
ほんと、あまりにも密度が濃かったですね~。メンバーの演奏とか衣装とか表情とか芸とか、そりゃもう各所に細かく反応ポイントがあったんだけど、多すぎて話題にしきれない…(笑)。あーそうだ慶一さん何か言ってたね、うん、そんな感じのこと。
>帰りに青山さんと夏秋さんが話しているところに遭遇
ちょちょちょちょっと待ってー、私のほうが今ドキドキして息止まりそうになりました…(笑)!nakamura8cmさん、そんな素敵なシーン(←ワタシ的に)に遭遇を…うらやましー。いやでももし私がそんな場面に出合ったら、ライダーズのライブの記憶すべてぶっ飛んじゃったかもしれないので、ある意味よかったのかもです…(笑)。
ほんと、素晴らしいライブでしたね~
ステキなレポ、ありがとうございます!リンクさせていただきました。(^^)
帰りには、ちらっとお会いできて嬉しかったです(^^)
いまだあの感動を思い返しては、じーんとしてる日々です…。帰り、ホントちらっとで、ちゃんとご挨拶できずスミマセン!でも松尾さんに「きゃー♪」と言ってる人がいる…と振り向いたら、果たしてJUNままさんだったので可笑しくてしょうがなかったですよ(笑)。
私もね「一色さんだ」って声がしたので見たらmoonlightdriveさんだったのよー(笑)
あそこで出会えたのも、すごい偶然だよね!(^^)
だと思うよ。
「scum party」の「scum」。
鶯谷の楽屋でオレに新譜のRくれた時に、
「scum party」の解説オレにしてくれて、
慶一さんがそんなこと(自分の曲の話)するの珍しいなって思ったんだ。
きっとお気に入りなんだと思うよ。
思えばあの時このアルバムが傑作なんだって気付くべきだったな。
そうすれば翌日ウチで腰抜かさずにすんだかも。
感動が蘇ります。
ツアーの途中でCD聴き直したら、なんとまあ、音源より今進行中の生の方が全然良くなってる!それも会場ごとに!と興奮しておりました。26年見てきた中でもっともカッコイイと思えるツアーでした。
あ、「合言葉はscum!」だったんですか~!
スカーレットかと思ってしまってました…。
おっと、噂をすれば…ジャ誰さん、コンバンハです。貴重なコメントありがとうございます!あ、「合言葉はscum」そうなのかー。できたてのCD-Rをジャ誰さんに手渡すときすでに、慶一さんの中にはこのアルバムへのただならない熱があったということなんですね。慶一さんのそのscum partyの解説、いつかどこかで聞けるか読めるかできるといいな~。ミュージックマガジン増刊で、新譜について博文さんが「4月のライブでカメ万あたりの曲をやったら全員気持ちがよくて、これぐらいのテンポがいいなって」と語ってらっしゃいましたが、シネマも登場したあのライブがあって、野音があって、アルバムが出て…すべて、つながっているんですね。たぶんその瞬間の連続で30年、なんでしょうね。
あ、眼福さんだー、コメントありがとです!
やーもう眼福さんのとこのレポ読みたいのずっとガマンしてて(笑)やっと読めたー。他のどのレポでも読めない「ツアー」の中での変化がわかって、ものすごく興味深かったです!あのアルバムの音ですでに人生50回分ぐらいブッ倒れてたけど、ナマで、あの音をまさにこの6人が生み出してるんだ…!って感じるのはやっぱり替えがたい体験だったな。
>26年見てきた中でもっともカッコイイと思える
これって凄いことだよね。今ライダーズは、音楽シーンすべてに向けて、アタマじゃなくてカラダで「バンド」とか「ミュージシャン」ってもののひとつのありかたを問いかけてるし、答えも出し続けてると思う。何の気なしに聴いてる私のようなヘタレファンが、いつのまにかますますおっそろしい体験に参加させられてると思うよ…。タメイキ。
それも懐古的なものじゃなくて、現役のね。
もういろんな人のレポとか見て、なんだか嬉しくってしょうがない。
ライダーズと出会えて良かったなぁとつくづく思いますよ。
popholicさんとこの「Weekly Chart」のなんばハッチの記事も読むのずっとガマンしてて、やっと読んだんですよー。“ライダーズと出会えて良かった”、ほんとに。どんな音楽を好きになってどんなアーティストと出合うかなんて、自分が思ってる以上に偶然の産物だろうから、たまたまライダーズと出合わせてくれた神サマに感謝しちゃう。だっておかげで今、「30年最前線にいるバンドのファンである」っていう、世界レベルで見たって稀な体験をしちゃってるわけだから、ね。