「はいからはくち」でぐるぐる

画像先週末の青山陽一さん、鈴木茂さん、田中拡邦くん(MAMALAID RAG)@下北Queのライブで何曲かのはっぴいえんどナンバーが演奏されたのだけど、その衝撃ってのがあらためてものすごくってさ…。それは、私が『ゆでめん』と『風街ろまん』(私が買ったのはたぶん80年にSMSから再発された盤だと思う)ばっかりとっかえひっかえ、ステレオの前で何時間も聴いてるような元高校生(約25年前、か…)だったせいもあるんだけど…。

とりわけ、松本さんの詞の凄さ。ライブのときの記事にも書いたけど、たとえば「はいからはくち」の「蜜柑色したひっぴーみたい」ってフレーズひとつのとんでもない殺傷力ったら。どこをどうすると、こんな狂った言葉が出てくるんだろうね。「蜜柑色した」「ひっぴーみたい」だよ。すっげーな…。…と、35年前に放たれた言葉に07年の下北沢でクラクラしながら、思いはぐるぐるはっぴいえんどのまわりをめぐって止まらなくなってしまったんだけど。

たとえば、「歌詞カード」のこと、とか。紙に書きつけられた文字が視覚に訴える強さって、(日本語の場合)思ってるよりずっとずっと大きいんじゃないかな、って。「ミカン色」じゃなくて「蜜柑色」で、「ヒッピー」じゃなくて「ひっぴー」で、「コカ・コーラ」じゃなくて「こかこおら」だっていう快感に近い違和感って、体の奥に撃ち込まれたが最後、ずっと疼くんだろうと思う。その辺、松本さんの詞はものすごくしたたか。私なんか「夏なんです」聴くと、いまだに「日傘くるくる ぼくはたいくつ」って松本さんの字が(たしか、そうだよね?)歌詞カードの上でぐるっと輪になってるの、そのたび頭に思い浮かべちゃうし。そう考えるとき、音楽が配信というフォーマットを選ぶのは時代の要請だとしても、歌詞カードっていう強力な武器を手放しちゃうのは、じつはもったいないことだよなーと思ったり。単にノスタルジーでそう言うんじゃなく、さ。

と、詞のことを思うと同時に、大滝詠一って人のロックボーカリストとしての才能と特異さにもつくづくため息をつく。はっぴいえんどの曲っていろんな人がカバーしてるけど、たいていの歌い手さんはえらく歌いにくそうだし、サマになってるカバーってそう多くはない。はっぴいえんどの詞の譜割のヘンテコさはよく言われることだけど、それ以前に、松本さんの詞って圧倒的に歌いにくいんだろうと思うんだよね。近代詩としての風貌を一歩も音楽に譲ってない鼻っ柱の強い言葉たちだから。それを反対方向に牽引していこうとするサウンド、それと大滝さんのボーカルってのがやっぱりすごいな…。またこの例だけど「蜜柑色したひっぴーみたい」なんて、こんな歌いにくい言葉をロックのビートで歌うなんて、まず不可能。「みかんいろ」なんてさ、乗らないもん、どう考えても。そこを、ああ歌ってしまう大滝さん。“歌っちゃってる”からふだん気付かないけど、他のアーティストがいざカバーしようとしたとき、そのスゴさにつくづく気付いちゃう感じ、なのかも。ロンバケ後の大滝さんがそんなふうに言われることあんまりないけど、やっぱり「ロックボーカリスト」として稀有な存在だと思っちゃう。

この大滝詠一というボーカリスト&ソングライターと、松本隆という言葉の紡ぎ手と、細野晴臣という強力にコンセプチュアルな才能と、鈴木茂という若き天才ギタリストと。私は、はっぴいえんどのサウンド自体は別に「奇跡」ではなく、他の数多のアーティストと同じように、想像力と創造力を最大の飛距離まで飛ばそうとする力量と試行錯誤の結果なんだろうと思うんだけど、ただ、こんな4人がひとつの場所に集まった(集まるしかなかった)ことは、やっぱりロック黎明期にしか有り得ない奇跡、だったのかもなあ。その、メンバーの「出合い」こそが、バンドの最初にして最大のマジックだと思うから。

そうそう、バンドのマジックといえば…松本隆さんがキャプテンストライダムと出合ったころのことを話してる中で(松本さんのサイト『風待』の「季節の松本 第6回」)、『僕はバンドっていうと、どうしても……それはやってはいけないんだけど、はっぴいえんどと比較してしまう。しょうがないよね、自分が居たバンドはそれしかないんだから』って言ってるのがおっかしくってね。そっかあ、たしかに松本さんがいたバンドははっぴいだけだもんな。でも、比べられるほうは酷だよね(笑)。

で~最近「はいからはくち」ヘビーローテーション!『風街ろまん』にはいってるやつもイイんだけど、BOX盤のボートラに入ってるシングルバージョン、このシャッフル調のも大好き。私、たぶん件のLPを買う前に何かのラジオ番組でエアチェックした「はいからはくち」がこっちのバージョンで、こればっかり聴いてたからものすごく馴染みがあるんだよね。茂さんのギター、細野さんのベース…、松本さんのドラムも独特でカッコイイなー。松本さん、風待ミーティング(99)とか風待クリスマス(02)とかでドラム叩いてるはずだけど私どっちも観てないから、松本さんの生ドラムすっごい聴いてみたい…。茂さんも細野さんもいまだバリバリ現役なわけだから、はっぴいえんど再々結成…なんてあったらなー。関門はやっぱボーカリストか。


わ~思うまま書いてたら意外に長文になった。茂さん×青山さん×田中くんのはっぴいえんどナンバーが大阪で鳴るのは今晩だね。いいなあ。行く人はぜひ堪能してきてください!


*『風街ろまん』はっぴいえんど


この記事へのコメント

nakamura8cm
2007年02月28日 23:08
う~ん、またもや名文。「蜜柑色」の乗せ方、もう発明!って感じですよねー。私も松本隆のドラム聴いてみたいなあと思い、考えてみたら一回聴いてました。再結成の国立競技場で。さすがに小さくてよく見えなかったので、小さいハコでもう一度聴いてみたい。確かにロクなカヴァーがないような気がしますが、直枝さんはほぼ大瀧さん完コピで「はいからはくち」を料理してたっけ。
moonlightdrive
2007年02月28日 23:33
nakamura8cmさん、いつもこまめにコメントどもどもです!
再結成ね、私が浪人中で行ってないやつ…(笑)。そうだ~私カーネーションの「はいからはくち」って聴いてないんですよー。(ラブスカのLPだっけ?)うん、カーネーションははっぴいえんどの直系だと(私は勝手に)思ってる。ボーカリストの存在感、骨太なサウンド、詞のありよう、まさにはっぴいえんどだよね。もっと言うとグランドファーザーズがはちみつぱいだと思ってるんだけどね。このへんシツコくいつまでも妄想してる(笑)。

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