of Montreal「no conclusion」の希望と絶望とリアリティ

画像ひとつの曲のことをここまで語りたくなっちゃうのは、相当深く刺さってしまってる証拠。なんだろうな。前にいちど書いた、of Montrealのミニアルバム『Icons, Abstract Thee』。ラストの「no conclusion」という曲が、ブラックホールのように今、私を完璧に飲み込んでしまってる。

ポップなのに悲愴で、ユーモラスなのに絶望的で。そして、曲の終焉に向かってすべてがすさまじく狂っていく。はじめて聴いたときから、この曲の不可解で圧倒的な力に息もできないぐらいだったのだけど。最近Lyricsサイトから引いてきた歌詞を追いながら聴くようになって、その切迫感のありかに、少し、ふれられたような気がしてる。

“no don't worry kid
 the darkness is just suggestion”

幾度もくり返されるフレーズ。「心配するなよ/その邪悪さはほんの気のせいだから」って。それは僕たちを試しているだけのことだから、勇敢に立ち向かえばいいさ、と、自分を励ましているようにも聞こえる。

でも、希望をかすかに含んだこのフレーズは、いくつもの否定的な言葉で打ちのめされ、徹底的に立ち上がれなくさせられる。

“I feel defeated”
“now something's wrong”
“although we try to break the loop, it's always stuck repeating”
“I always thought things would change somehow
 and we would start getting along but it's hopeless”


どんなに破ろうとしても崩すことのできない、邪悪さのループ。何か変なんだ。どっかおかしいんだ。どうしても駄目なんだ。きっとよくなるだろうと、どうにかして変えられるだろうと思ってたのに。

…“hopeless”なんだ。

ラメ入りのアイシャドウとチークをつけて、シフォンのブラウスをまとって、眩しいライトを浴びながら何百何千の観客の前でダンスするケヴィンは、でも、世界の淵で圧倒的に孤独でいる。闘うべきものの巨大さに壊れそうになりながら、ひとりぼっちで、この世界のどうしようもないdarknessと向き合ってる。

曲の中でくり返される“no don't worry kid”というフレーズの中、一カ所、ケヴィンは“no don't worry kevin”と歌う。そのつぶやきの孤独とせつなさ。「ケヴィン、心配するなよ」その言葉を握りしめながら、彼はどこへ向かおうとしているんだろう。

“and I never ever ever wanted to write this song”
リピートされる彼のこの言葉が、心臓を貫通したまま、抜けることがない。正確な意味は到底わからないけれど、ケヴィンは、自分が、歌うことでしか、音楽を作ることでしか、何かと闘うことはできないことを知っているんだよね。息をすることさえ、生をつなぐことさえ、ギリギリの場所。そんなところに立たされても、「歌う」ことしか選べないということの、あきれるほどの馬鹿馬鹿しさと、あまりの崇高さ。


“and I never ever ever wanted to write this song
 I always thought things would change somehow
 and we would start getting along but it's hopeless
 hopeless”


苛立ちと絶望のあいだを揺れる詞は、ポップなメロディと煌めくような音を連れてメリーゴーラウンドを加速させた末、狂騒の結末へと向かう。痛々しいほどなにかを希求するケヴィンの叫びを、静かに土の中へと眠らせるように、最終章のストリングスが鳴る。それはまるで、広大な墓地に降りそそぐ星屑のように、悲しく、うつくしい。



この『Icons, Abstract Thee』というミニアルバム、ちょうど普通に買えるようになるのが今日からなんだよね(今までは通販とライブ会場だけだったみたい)。もし機会があれば、この「no conclusion」という歌に出合うためだけにでも、買ってみる価値はあると思う。amazonなら今1000円ちょっとで買えるし。HMVの「輸入盤CD3点買うと25%オフ キャンペーン」の数合わせにもおススメ。って私はレコ屋の回し者か…。(でもこのHMVの商品ページでリンクされてる試聴サンプル、ぜんっぜんちがう曲だから!どうしてこんなことになってるんだ…。amazonのほうは合ってます。)



この「no conclusion」という曲の、歌詞の重さに気付かせてくれたのは、見も知らぬ相手ながら同じようにof Montrealに参っているのであるらしいかたの、この記事でした、ありがとう。(私のバカ記事にリンクしてくださってることにも、感謝です。)


*『Icons, Abstract Thee』of Montreal


この記事へのコメント

サンタ
2007年05月12日 01:19
こんばんは。僕もオブモンの大ファンです。THE CHAPというアーチストも聞いてみて。もしかして好きかも?オブモンよりダークですけど・・・僕のおすすめです。それでは。
moonlightdrive
2007年05月12日 10:43
こんにちは!どちら方面のサンタさんかわかりませんが、おススメありがとうございます~。ちなみに私めっちゃ洋楽初心者なんですけど大丈夫でしょうか…(笑)。THE CHAPですね、メモメモ~。
2007年05月15日 23:18
どうもはじめまして。勝手にリンクしてしまってすみません。moonlightdriveさんのオブモン関連記事、楽しく読ませていただきました。ホント「no conclusion」は、普通これだけ長い曲だと途中でダレるものですが、飽きないし、何回でも聴けるのがスゴいです。
moonlightdrive
2007年05月16日 11:16
na23さん、ハジメマシテ!はるばるコメントしにきてくださってありがとうございます~。こちらこそ超勝手にリンクしちゃいまして失礼しました。ね、「no conclusion」ほんと凄い曲ですよね。アルバムの「the past is a grotesque animal」と並んで、ケヴィンの「今」の、ある種の極地かもしれないと思う。これだけ才能と繊細さがありすぎると、本人は苦しいだろうな…とか。of Montrealの、ケヴィンの、向かう未来から目が離せません。
2007年11月15日 04:01
同意の度合いの高さに驚きました。さいしょpast is~は好きじゃなかったんですが先日ライブ音源きいて大好きになりました。
no conclusionは、正直すぎるケビンのそこまで言っていいのか~な感じって意味でもギリギリな感じがします。でもそれがメチャクチャ共感します。響いてほしい部分に響く歌詞とメロディーと音ですよね・・・いや全然語り尽くせない・・・
間奏への"イリ"が感動しました。ブレイクしてギターがギューンてところ、あんな斬新なというか、ストレートでオリジナリティのある展開、書ける人はいないと思います
moonlightdrive
2007年11月16日 02:36
レオさん、ハジメマシテ。コメントたくさんありがとうございます!同意の部分多かったなんてウレシイな。うん、この曲はほんとギリギリな感じ。聴くたびKevinのことが心配になっちゃうほど。そう、Kevinってセンシティヴなうえに正直だから、相当ヘヴィーだろうなって思います。でもそれを必ずポップに表現するところがすばらしいな…。

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