ムーンライダーズの新曲「You & Us」

画像遅ればせながら、2/18から配信が始まっているムーンライダーズの新曲「You & Us」をダウンロード~。リコーダーやアコーディオンやグロッケンの音色に彩られたうつくしい小函の淵に、ふっと底無しの闇を覗かせるような曲調、とても慶一さんらしい。そして、詞も、とてもね。

君らには僕らに話したいことあるんだろ
僕らには僕らの伝えたいことあるけど
黙ってるよほら言葉にしないで
調子っぱずれの歌でいい

(※聞き書きなので正しくないかもですが)

「伝えたいことあるけど」「黙ってる」、って、壮絶な覚悟がなきゃ言えないことだなって思う。

今、世の中は伝えやすい言葉で満ちている。おざなりにくり出される“いつまでも君を愛しているよ”や、お題目のように唱えられる“いつも君の味方だよ”で、ほんとうに相手とつながれるなら、そんなラクなことないよね。内向きのコミュニティの中で心地よい言葉を大量にやりとりして、形式的に愛し愛された気分になって。でも、薄っぺらな愛を張りぼてした「You」と「Us」の関係は、ちょっとしたきっかけで、簡単に暗転もする。薄っぺらな憎悪が、コピペされては増幅していく。その中味は空疎な記号でしかないのに、人に与える痛みはリアルだ。

その危うさを知ってる慶一さんは、「黙ってるよ」と、そのかわりに「調子っぱずれの歌でいい」と、うたうんだ。

今の「手軽で便利で妥当で快適な」世の中からしたら、調子っぱずれの歌は、さぞや聴きにくいだろうね。金星や月を経由するコミュニケーション(しかも電報だなんて!)は、いかにも時間がかかって面倒くさそうだ。ま、どう考えてもマス向きじゃない。

でも、その調子っぱずれで面倒くさいコミュニケーションの中にある「真摯さ」を、たとえ世の中の最後のひとりになっても守ろうと覚悟を決めているのが、慶一さんであり、ムーンライダーズってバンドなんだと思う。文字づらだけの「愛」を大量生産してバラ撒くよりも、自分の手で時間をかけてたしかめた真実を、愚直に手渡していこうという決意。その手渡す場所にいる「You」はもしかしたら、複数形の「君ら」ではなく、「君」なのかもしれない。

そして、彼らにとって、自分の大切なものを相手に手渡しするもっとも信頼できる方法は、やはり「自分たち自身の音楽」なんだろうなって思う。けっして、ネットの情報やマーケティング会社が作った宣伝文句ではなくて、ね。その、“音楽でしか伝えられない不器用さ”が、私にはとてもまぶしく見える。

音がスピーカーから聴こえてきた瞬間、送り手の姿が見えなかろうと、相手が地球の裏側にいようと、たとえ宇宙の果てにいようと、こめられた思いが自分のハートの真ん中にびゅん!と飛び込んできて、リアルに「きみがここにいる」と感じられる。それが、音楽のマジック。

そんな「音楽の力」を、本気で信じる愚直さと勇敢さがミュージシャンにもリスナーにもあるなら、無責任や無名性や噂でぶくぶくに膨れた情報網なんて、お互いのあいだに要らないのかもしれないね。リスナーの私は、どうだろう? 魔法を信じる覚悟(それはふわふわしたものじゃなくて「覚悟」だ)はできてる? その場所に“音”を受け取りに行く準備はOK? 受け手もいつも、問われてるんだと思う。たしかな手ごたえのある単数形の「You」がこちら側にいると思えなければ、やっぱり彼らだって大切なものを発信はできないはずだし、ね。



(はー超~時間かけて妄想かっ飛ばした…。)


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